障害のある方のコミュニケーションを支える現場では、「いま、この瞬間に話せる相手がいる」ことが、大きな安心につながります。チャレンジドパーソン社の内海社長は以前から、障害のある方が対話できる「仕組み」の必要性を感じていました。
SCIENは内海社長とともに、対話支援のためのシステム / アバター(以下、対話支援アバター)の構想を、アジャイルに形にする取り組みを開始。今回は、プロジェクトの始まりから運用の難しさ、そしてこれからの期待までを伺いました。
話し相手になってくれるものがあったら—取り組み前からあった想い
今回の取り組みが始まる前、どんなお気持ちでしたか?初回のオンライン面談のときの印象も含めて教えてください。
正直、こういう「対話をする仕組み」は、ずっと欲しいと思っていたんです。障害のある方が、話し相手になってくれるものがあったら、救いになる部分があるんじゃないかって。ちょうど世の中でチャットの技術(ChatGPTのようなもの)が出てきて、「僕らが普段会話するように、そういうことができないかな」とおぼろげに思っていました。
最初の面談で、そのお話をされていましたね。
そうです、そうです。で、小野さんが心理学などの知見も持っていて、話を聞きながら「もしかしたらできるかも」と思えて、ワクワクしました。 2回目に「こんな感じならどうでしょう」という資料が出てきて、そこからは早かったですね。たぶんその場で「やりましょう」と。1週間以内に契約しましょう、みたいな。
社長が勝手にやってる、にしたくない。一番の難しさは「運用」だった
始まってみて、難しかったことはありましたか?
特に難しかったのは、社内で言うと、どう運用していくか。スタッフが、これをどう日常業務に組み込んでくれるか。そこはずっと考えていますし、今も考えています。たとえば利用者さんが「クマさん(対話支援アバター)ならしゃべるよ」って言ったときに、ぱっと「じゃあクマさん出すね」って自然に出せる状態が、いちばん“落としどころ”として良いと思うんです。
必要なときに、すぐ使える形にする。
そうです。必要とされるものでないと、また「社長が勝手にやってる」みたいになってしまう。それは絶対にしたくない、というのが社内的な課題として大きかったです。
スクラッチ開発の不確実性—「作ってください」ではなく「一緒に探す」プロジェクト
今回のようなスクラッチ開発に近い形は、これまで経験はありましたか?
チャレンジドパーソンとしては、ないですね。基本的には、できているもの(既製のサービス)を導入することが多い。だから「どうなるか分からない」というのはありました。これは「これ作ってください」とオーダーしているわけじゃないから。考えて、試して、うまくいくかもしれないし、いかないかもしれない——それを重ねていく。そこをイメージする作業は、結構難しかったです。
不確実性があるからこそ、対話しながら形にしていく必要がある。
そうですね。だから僕が気を付けていたのは、邪魔しないこと。詳しくないのに口を出しすぎても良くない。小野さんが持っている部分を出してもらうほうがいい、という感覚でした。「こうしよう、ああしよう」と言うより、任せるところは任せる。緊張感はあるけど、ちゃんと向き合って、スタッフも巻き込んでやらないと、途中で「ごめん、できなかった」はできないですから。
まず動くものを—1.5か月でのアウトプットが、前に進む力になった
プロジェクトの初期に「何かしら動くもの」を、というお話もありました。
そこは明確にお願いしましたね。結果的に、1か月半で出してもらったと思います。あれはめちゃくちゃ早かった。まず「動くもの」が出ると、そこからが本当のスタートになる。そこはすごく大きかったです。
目指すのは「決める」ではなく「橋渡し」—支援者の力になれる未来へ
これから、この取り組みがどうなっていくと良いと思われますか?
障害のある方のサポート、特に支援者の方のサポートになればいいと思います。それと、言葉の選び方は難しいんですけど、アバターやシステムが何かを“決める”というより、あくまで橋渡しというか、仲介というか。渡してもらって、コミュニケーションが進むような存在になっていくといい。
現場でがんばっている方々への配慮も含めて、丁寧に設計していく必要がありますね。
そうなんです。「これ入れたら良くなるよ」って言い切るのも、よく考えると失礼にならないか、とか。良くならなくはないと思うけど、時間がかかったりもする。だからこそ、丁寧に進めたいですね。
内海社長からSCIENへの一言
最後に、今回の取り組みを通して感じたのは、“一緒に悩みながら、形にしていく”価値です。最初は不確実性もありましたが、早い段階で動くものが出て、そこから議論が前に進みました。現場で必要とされる形に落とし込みながら、支援者の方の力にもなれるように、これからも一緒に磨いていきたいと思っています。